「かに道楽」中国人バイトはなぜ先輩を刺したのか…浮かぶ日中「仕事観の違い」「なに灰汁(あく)取りしてんねん!」。
そう叱責された中国人アルバイトの男は、豆腐を切る作業を突然止め、先輩調理師に包丁を突き立てた。
大阪市中央区の「かに道楽道頓堀中店」で、調理師の男性を刺して重傷を負わせたとして傷害罪に問われた男の公判が5月、大阪地裁で開かれた。
事件の発端は男がカニをゆでていた鍋の沸騰に気づき、灰汁を取ったこと。かに道楽ではアルバイトが鍋を触るのはご法度で、調理師は規則に従ったまでだが、男の目にはその姿勢が理不尽に映ったらしい。トラブルの一因は日中両国間の仕事観の違いにある。
日本で働く外国人が増えている今、同じような事態はいつ起きても不思議ではない。
■仕事は「鍋の盛りつけ」
「仕事を手伝おうとしたのに、気持ちを分かってもらえなかった」
中国人アルバイトの高爽(ガオ・ショアン)被告(24)は大阪地裁で開かれた初公判で、こう犯行動機を語った。
事件は地下1階の調理場で起きた。豆腐を切っていた高被告は、調理師が目を離した鍋から蒸気が噴き出しているのに気づき、火を弱めて灰汁を取った。
ところが、それに気づいた調理師は「鍋を触るなと言うたやろ!」。褒められると思った高被告は、予想外の反応に怒りを爆発させた。
「ありがとうやろ!」「あなた、それでも人間ですか!」
怒り心頭の高被告に、調理師は鬼のような形相で近づいた。高被告は殴られることを恐れ、持っていた包丁で調理師を威嚇。
それでも調理師は歩みを止めず、包丁は腹に突き刺さった。