自動運転車、運転手置き去りで帰宅多発 米
人間が運転することなく自動で走行する自動運転車が公道での試験走行中、運転手を置いたまま車庫に帰ってしまう事故が今年だけで287件起きていたことが分かった。
米ニュースサイト「ヨセミテ・オンライン」が伝えた。「ロボットカー」「スマートカー」とも呼ばれる自動運転車は自動車業界だけでなく、米グーグル社などIT業界も巻き込みながら現在急速な進歩を見せている。日本でも20年をめどに各社が高速道路での完全自動運転を目指している。
同サイトによると、置き去り事故は今年に入ってから急増。昨年の21件に対し、今年は8月末で既に287件を数えた。事故のほとんどは車が自宅から10キロ圏内に近づくと急停止、不審に思った運転手が外に出た途端、勝手に発進してしまうというもので、先に戻った車は庫内に正しく駐車されていた。
原因について、当初は乗車を検知するシステムの不具合と考えられていたが、車載用基本ソフト(OS)をアップデートしていくほど異常行動が多発。さらに追究したところ、車載OSに含まれるフィットネス機能が原因であることが分かった。
フィットネス機能は近年IT業界で注目されている分野の1つ。持ち主の歩数や移動距離、心拍数などから消費カロリーを計算し、運動不足と判断した場合、適度な運動を呼びかける機能で、今年5月に発売されたアップル社の「アップルウォッチ」にも搭載されている。
車載用フィットネス機能はスマホやスマートウォッチと連携して移動距離を正確に測るために使用していたが、置き去り事故はこの機能が「ドライバーが車内でハンドルすら握らず怠けている」と判断、健康のため徒歩で帰宅するよう促したことが原因とみられる。度重なるアップデートで「賢くなりすぎた」弊害が露見した格好だ。
運動と健康の関係に詳しい京都大学運動学部の坂本義太夫教授(トライアス論)は「根幹技術は同じなのに、片やロボットカーで怠惰を促しておきながら、片やスマホや腕時計が運動を強制するという、まるで親の小言のような不条理。人をどんどんダメにしていくことこそIT技術の本質ではなかったか」と昨今の健康押し付けに警鐘を鳴らした。